私は埼玉県の看護大学を卒業後、癌病棟へと配属されました。そこでは抗がん剤治療や手術をする患者さんが多く、更には肺がんの病棟だったため予後が悪い方が殆どです。
そんな闘病生活を続けていると、精神的に病んでしまう方もいて、そんな患者さんに何か自分に出来ることはないかと思ったときにマジックに出会いました。
最初は本当に簡単なマジックしか出来ませんでしたが、それでも見てくれた方は「少しの間だったけど辛いことを忘れさせてくれてありがとう」と言ってくれました。
それがとても嬉しく、それからは仕事の合間にこっそりと患者さんにやるようになりました。
そんなある日、プロになるきっかけとなった患者さんに出会いました。
20代の若い末期の患者さんです。
ステージ4の、余命も宣告されているような方でした。その患者さんにマジックを披露するタイミングがあったのですが、当時の私はトランプマジックしか出来ず、マジックの性質上相手にカードを引いてもらったり、覚えてもらったりとお手伝いしてもらうことが必要でした。しかし健常者と違い、体調的にとても難しい方でした。
その時私は、トランプだけでは相手を楽しませることが出来ないと感じ、初めてトランプ以外のマジックを覚えようと思ったのです。
その時「見ているだけでも楽しいマジックを覚えてくるから、絶対に見せてあげる!」と約束しました。笑顔で頷いてくれたことは今でもよく覚えています。
そして家で練習し、これで見せることが出来るぞと病院に出勤したのですが、まさにその時その患者さんが急変を起こして亡くなってしまいました。
その時の私の心情は、【約束を守ることが出来なかった】でした。
他のスタッフから「マジック見せてもらうんだって楽しみにしてたよ」と教えられたとき、やるせない思いでいっぱいでした。
もしも元々たくさんのマジックが出来ていたのなら、亡くなることが確定してたとしても一瞬でも楽しい思い出が作れたんじゃないかと。
その日からマジックに対する思いが強くなり、バカみたいに練習に明け暮れました。そして現在の師匠となるTommy氏に出会いました。
それからはもう後悔したくないという思いと、マジックをたくさんの人に楽しんでもらいたいという思いで活動を続けてきました。
そして出来上がったのが看護師マジシャンという異色のマジシャンだったのです。
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